【-第53回- もう卓球はいい。でも…】


 チャパリータです。夏が来ました。私、ナツが大の苦手です。4月には「春が嫌い」と申しておりましたが、気候に関しては圧倒的に夏が苦手です。今年は梅雨明けまで涼しい日々が続き、冷夏かと期待したのもつかの間、蓋を開けたら猛暑の日々がやって参りました。しかしここ数年、以前ほど辟易することが少なくなってきたように思います。決して、年々酷暑を極める日本の夏に慣れた訳でも暑いのが好きになった訳でもありません。たただた諦めたのです。これを老いというのかもしれません。


 今宵は卓球界という閉鎖された亜空間に10年間従事する私の苦悩や日々の葛藤、好きを仕事に選んだ人間の胸の内を赤裸々に吐露します。うだるような熱帯夜にピッタリの話題かと存じます(汗)。


 そもそも私が卓球界に足を踏み入れたのはひょんなことから。専門学校卒業後、趣味の卓球とカメラを活かしたいという条件のもと選んだ前職を経て、今はWRM高田馬場店にて店長を務めております。前職も同じ高田馬場だったりWRMに知人がいたりと、さまざまな要因が重なった末の結論でした。


 好きを仕事にすることの苦悩は「毎日接し過ぎて好きなのかどうかすら分からなくなる」「業界の嫌な面、裏事情等を知り、好きだったが故に減滅すること」など本当にありきたりなもの。この流れは卓球に限らずあらゆる分野で起こりうる事象なのでしょう。好きを仕事にする、その喜びを得る一方で何らかの代償を払わされる傾向にある気がします。特に理容や職人の道を選んだ知人からは「給料が少ない、休みがない」といった嘆きや、そもそも利益が出せるようになるまでの修業期間は給料が出ないといった話も聞きました。世間的には即ブラック認定でしょうが、能力に見合ったリターンという意味では筋が通っているとも感じます。学校でお金を払って教えてもらっていたことを、プロの現場で無償で学べる。半人前の段階で少ないなりにも給料が出る。そう考えると、社員全員に手厚い手当のある大手企業はやはり凄いというか、私には異様とすら感じます。


 最近、知人から「ずいぶん参ってるみたいだけど、それでも辞めない理由は?」と訊かれました。冷静になって考えてみたところ、2つの対照的な結論に辿り着きました。まず一つは、日常の慣れからくる「惰性」。もう一つは、この業界で得たスキルを100%発揮できるのは今の場所しかないという素直な気持ち。それを手放すのが惜しいと思えるほど、実は今でも卓球を好きな気持ちは変わらない! という気恥ずかしさすら覚えるようなピュアハートでした。


 好きをキッカケに歩み始めた道でも、その分野が専門的であるほど、時間の経過とともに前進も撤退も難しくなります。正直、今の心情は…好きな気持ちも絶対的に残っているし、それ以上に“これでしか食っていけない”という自負はたまた覚悟を決めているフシがあります。もはや『好き』という感情の中だけで測れるものではなくなってきているという一面があります。


 そんな逡巡や葛藤をよそに、何かと羨まれることが多いのも事実。お客様からの「日々卓球に囲まれていられるなんて幸せですね」というありがたいお言葉や、年齢的にも苦悩の多い時期であろう同級生からは「俺の日常を見せてやりたいよ。朝から晩まで好きでもない仕事に追われ、給料だって決して高くはない。お前のように好きなことをやっていればよかった」など。人生は皆ワンアンドオンリー、他人の生活をおいそれと“お試し”できないが故に隣の芝生は青く見えるもの。が、それでも思うんです。「やっぱり、ボク恵まれてるんだな」と。



 好きを仕事にするのって本当に覚悟がいることだと思います。好きが「嫌い」に変わるほど、見たくない知りたくない現実が山のように待ち構えています。その反面、覚悟を決めたからこそ得られる喜びは代えがたいもの。まさに表裏一体、ラバーやラケットの性能みたいなものですね。
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 好きなメーカーの商品を扱ったり、自分がプロデュースした企画で商品化したり。そして、それを手にしてくれた皆さんの笑顔! 振り返れば、夢を次々とカタチにしてきたチャパリータHistoryです。改めて、WRMに感謝。